2025年4月の社長就任から1年が経ちました。社長業には楽しさとやりがいがあり、自身の知見や経験をグループ全体という規模で活かせることに大きな喜びを感じています。若い頃、限られた予算の中でガスタービンの研究開発に苦労して取り組んだ時のさまざまな経験も活きています。就任以来、私は「全体最適」と「領域拡大」を掲げる経営の方法論「ITO」(Innovative Total Optimization)の浸透に注力してきました。就任初日、全社員にITOの概念を説明するメッセージを送り、その後もITOの考え方を社内外に継続的に発信し続けた結果、社員がそれぞれの仕事でITOの実現に向けて自ら進んで動いてくれていることを実感しています。
特に生産現場では、「全体最適」の目標として掲げている「リードタイムの半減」に向けた活動が力強く進んでいます。通常のリードタイム短縮は特定のボトルネック解消にとどまりがちですが、半減となれば、営業から設計、調達、製造に至るバリューチェーン全体を見直す必要があります。社員はこの点をよく理解して取り組んでくれており、ITOのスタートに確かな手応えを感じています。
2025年度の経営成績は、受注高、事業利益、フリー・キャッシュ・フローなどいずれも過去最高を更新しました。エネルギーや防衛といった伸長事業を中心に受注が拡大し、かつてない水準の受注残高を有しています。好業績の背景には、地政学リスクやエネルギー安全保障への関心の高まりなど、社会の課題やニーズと三菱重工グループの事業内容が合致したことがありますが、それだけではこれほどの成果は得られません。成果の根底には、社員一人ひとりが積み重ねてきたお客様との強固な信頼関係があり、「難しい課題も三菱重工なら解決してくれる」という期待が、多数のリピート受注につながっています。長年培った技術力と誠実な仕事ぶりが実を結び、過去最高の業績を達成できたと評価しています。
ただし、現在の姿はまだポテンシャルの5%程度を発揮したに過ぎません。残り95%の大いなるポテンシャルを解き放つため、ITOの取り組みをさらに波及、加速させていきます。
ITOの浸透のため、社長としての想いを明確なメッセージとして示すことを心がけました。強制はせずとも、方針を言語化し、繰り返し分かりやすく伝えたことが社員の心に火をつけるきっかけになったと考えています。
現在、各部門の特性に応じてITOを自発的に実践する動きが広がり、現場から具体的なアドバイスを求める声も増えました。そうした声を受けて私自身が対話を重ね、方向性を示すことで、社員の理解はさらに深まっています。
既に一部の活動を先行して展開していますが、着手できている項目はまだ全体のごく一部に過ぎません。今後、成功体験を少しずつ積み重ねていくことで、今は難しく見える課題にも対応できるようになるはずです。事業所制の廃止から約10年かけて醸成された全社横断的な組織風土を基に、ITOを定着させて組織のレベルを上げ、具体的な成果へとつなげていきます。
| 全体最適 | 領域拡大 | 目指す姿 |
|---|---|---|
| スリムな運営【縦】 | 桁違いのスケール化 | 高利益体質 |
| 横通し・連携【横】 | 新たな価値創造 | 成長への投資 |
シナジー効果
▍ITOの浸透を目的とした社員との座談会イベント「ITO Premium Talk」を実施