Special Feature 社長対談
社会インフラ分野やナショナルセキュリティ分野など、失敗や異常停止が許されないミッションクリティカル領域でAIをどう活かすか。2026年6月、三菱重工は、AI半導体から計算基盤、生成AI基盤モデル、AIプロダクト・ソリューションまでを一貫して開発するPreferred Networks(PFN)と、ミッションクリティカル領域における国産AI技術の共同開発に向けて業務提携しました(2026年8月には資本業務提携契約を締結)。両社のトップが、AIの信頼性や社会インフラへの実装、提携が生み出す企業価値について意見を交わしました。
情報理工学博士。東京大学大学院在学中に、西川徹氏らとPreferred Infrastructureを創業。2014年にAIの実用化を加速するためPreferred Networks(PFN)を創業。最高技術責任者として国産生成AI基盤モデルPLaMo™や汎用原子レベルシミュレータMatlantis™など、PFNの技術開発および事業化をリード。2025年11月にPFN社長に就任。受賞歴、著書多数。
伊藤 世界では国際政治の不安定化や安全保障意識の高まり、サプライチェーンの分断、労働力不足、社会インフラの老朽化など、さまざまな変化が同時に起きています。このような事業環境下で、私たちは「レジリエンス」をキーワードに掲げ、安全・安心の実現、エネルギーの安定供給、モノづくり産業基盤の再構築、多様化する社会インフラニーズへの対応など、三菱重工が貢献できる分野において、事業機会を捉えていきたいと考えています。その中でAIを活用し、競争力を高めながら社会課題の解決を目指していきます。
PFNは、AI基盤モデルだけでなく、AI半導体や計算基盤、アプリケーションまで自ら手掛けています。日本が独自の技術と開発能力を持ち、データ主権にも配慮しながらグローバル競争に挑むという姿勢は、三菱重工とも非常に親和性が高いと感じています。
岡野原 今お話しいただいたレジリエンスに関わるテーマは、いずれもPFNの取り組みと深く関係しています。PFNは2014年の創業以来、AIを作るだけでなく、産業領域での社会実装に注力してきました。AIが1つのアプリケーションから社会を支えるインフラへと近づくにつれ、技術やデータ、運用ノウハウを国内に蓄積する重要性は一段と高まっています。とりわけ安全保障や社会インフラは、日本が主体性を持って取り組む必要がある分野です。
なかでも、フィジカルAIは、PFNが長く取り組んできたテーマであり、まず実際の現場で確実に使えるAIを作ることが重要です。三菱重工とは、これまでの共同研究を通じて、その考え方を共有できると感じていました。
伊藤 私も、両社が目指している方向は同じだと感じています。三菱重工の製品には、発電設備、交通システム、防衛装備品、ロケットなど、社会や国民生活を支え、確実な稼働が求められるものが多くあります。こうした社会インフラ分野およびナショナルセキュリティ分野をはじめとするミッションクリティカル領域では、AIの中身や学習データ、処理の仕組みを理解し、制御できることが大前提です。ハードウェアとソフトウェアの双方を理解するPFNとの連携に大きな可能性を感じています。
岡野原 ミッションクリティカル領域でAIを使うには、AIが結果だけを返すブラックボックスでは不十分です。どの条件に基づいて判断したのかを明らかにし、少なくとも制御可能な状態にしなければなりません。さらに重要なのがリアルタイム性です。数ミリ秒、場合によっては数マイクロ秒で判断するシステムでは、AIだけでなく半導体や通信、制御を含め、ハードウェアとソフトウェアを一体で最適化する必要があります。
伊藤 そうですね。確実に動かすことに加え、想定外の事象が起き