▍事業環境民間航空機では、業界全体にわたる人手不足等に起因するサプライチェーンの供給制約に伴い生産機数が停滞していることから、機体メーカーの受注残は過去最高を更新し続けています。当面は旺盛な需要に供給が追い付かない状況が継続するとともに、さまざまな地政学的リスクが懸念されるため、短中期的には不安定な状況に備える必要があります。一方、経済成長に伴って旅客需要が長期的に拡大していく見込みは変わらず、旺盛な需要を背景に、今後は生産機数、運航機数ともに増加すると予想されます。また、業界ではCO2排出量削減の動きからSAF※1導入や電化といった環境適応技術の進展、無人機や空飛ぶクルマなどの次世代空モビリティの社会実装などが進むことが期待されています。
防衛では、国家安全保障強化の機運の高まりを受けて、国の防衛力整備計画が大幅に拡充されました。防衛力の抜本的強化にあたって防衛力整備計画で示された7つの分野へ予算が重点配分されており、以前から当社シェアが非常に高い分野、当社製品や技術力によって貢献可能な分野が含まれています。
宇宙では、世界的な宇宙空間の利用の高まりを背景として、ロケットの打上げ需要が拡大しており、特に、日本の新型基幹ロケットであるH3ロケットに対し、国内外の衛星事業者から多くの期待が寄せられています。
※1 SAF: Sustainable Aviation Fuel(持続可能な航空燃料)
民間航空機では、構造Tier1事業において、機体メーカーの増産計画に着実に対応するとともに、サプライチェーンの制約を背景とした機体メーカーにおけるマルチソース化の動きを捉え、受注拡大を目指します。さらに、設計・製造・認証プロセスのデジタル化や、先進複合材、高レート生産を実現する自動化技術の研究開発を推進することで、新規プログラム参画に向けた取り組みを強化しています。アフターマーケット事業では、CRJを主とする既存のMRO※2事業の生産性向上に加え、コンポーネント修理、中古部品整備販売への領域拡大、またCRJ延命需要への対応、AIを活用した航空会社の運航支援などに取り組むことにより事業規模拡大と収益力向上を図ります。2026年6月にはJALエンジニアリングとアフターマーケット事業の合弁会社Aero Breathを設立し、国内でのMRO事業の拡大も目指していきます。また、新たな事業領域の開拓としては、これまでの航空機開発・製造で培った技術を活かし、民生用途と防衛用途の両方に対応可能なデュアルユース無人機の開発も進めています。
防衛では、スタンド・オフ防衛能力、新型護衛艦、豪州向けフリゲートなど、複数の大型案件を受注し、当社グループの国家安全保障への貢献が期待されています。このほか、無人アセット防衛能力等の強化、従来装備品の能力向上や周辺分野の拡大等に応えることで、安全・安心な社会を支え続けていきます。
宇宙においては、H-IIA ロケット最終50号機の打上げに成功し、事業を完遂しました。また、H3ロケット7号機の打上げに成功し、HTV-X1号機は物資輸送および技術実証プラットフォームとしてのミッションを完遂することができました。H-IIA ロケットの実績を後継機H3 ロケットへ引き継ぎ、関係先と連携しながら社会への貢献を一層進めていきます。
これらの工事を着実に遂行するため、全体最適を意識した生産性向上、設備投資、人的リソースの拡充と育成など、各種施策を引き続き推進していきます。
※2 MRO: Maintenance, Repair and Overhaul(修理、整備)
▍次世代大型貨物機777-8F向け後部胴体パネルの初号機出荷 2025年10月、当社はボーイング社が開発する次世代大型双通路機777Xシリーズの貨物専用型777-8F向け後部胴体パネルを初出荷しました。777Xは空力性能の向上と新型エンジンの搭載により、燃料消費量およびCO2排出量を従来機に対して約20%低減するなど、高い環境性能を有しています。後部胴体パネルは、当社が独自に開発したMulti-panel Pulse Assembly Line(MPAL)により生産されています。MPALは、従来の定置式から、パネルを移動させながら各工程を順次処理する流れ作業へ転換し、工程の一貫化を実現した生産方式です。さらに、異なる形状のパネルを同一ラインで生産する混流生産に対応するとともに、ロボット搬送や自動打鋲、検査の自動化技術を組み合わせることで、生産効率の向上と品質の安定を高い水準で両立しています。
今後も当社は、航空機製造を通じて空の輸送の安定と持続的発展に貢献していきます。
▍©Boeing ▍777-8F 型機